エコノミークラス症候群とは?
前回までに、避難所での雑魚寝による長期生活は、エコノミークラス症候群のリスクが高まることを記してきました。
では、エコノミークラス症候群とはどんな病気なのでしょうか?
飛行機で長時間座ったままでいると、下肢の静脈内で血液が鬱滞して粘度が高くなり、血栓が発生します。(深部静脈血栓症)
そして席を立ったりする何かの拍子に、伸びてきた血栓がちぎれて肺や達するのですが、重症の場合は肺が詰まり、今まで元気だった人が突然死に至る怖い病気です。(肺血栓塞栓症)
2002年にサッカーの高原直泰選手が罹患したことでも有名ですね。
もちろんエコノミークラス症候群とは言うものの、ビジネスクラスでも発症しますし、長距離バスなどもリスクが高いそうです。
確かに、先日イタリアに行った時も当然エコノミークラスでしたが、身動きの取れない12時間に及ぶフライトは、まるで拷問でした!
本当は避難所症候群?
そのエコノミークラス症候群が大きく注目されたことがありました。
2004年10月23日に発生した新潟地方を襲った中越地震です。
この時は、プライバシーなどの理由から避難所ではなく、クルマで避難生活をした人がたくさんいたのですが、その中で数名の方がエコノミークラス症候群で亡くなったのです。
このときはマスコミも取り上げ大々的に警鐘を鳴らしました。
しかし、新潟大学榛沢医師の研究で、常識を覆す事実が判ってきました。
実は、エコノミークラス症候群はクルマでの避難だけでなく、避難所にいる人々も高い発症率だったのです。
車中より避難所のほうが血栓の発症率が高かった!
さらに発災から半年後の長岡市に於ける検診で、避難所生活のほうがクルマ避難よりも高い結果が出ました。
また榛沢医師は、中越地震以降も能登半島地震、中越沖地震、岩手宮城内陸地震と継続して、被災者を検診し続けた結果、避難所ではエコノミークラス症候群が多発することを突き止めました。
劣悪な避難所環境!
大災害時の避難所は、学校の体育館が多いのですが、人口密度が極端に高く、床には毛布1枚で1日中雑魚寝で、食事も配給のおにぎりや冷たいお弁当ばかりです。
さらに、冬は寒くても暖房は一部しかありませんし、夏ももちろんクーラーはなく数台の扇風機がからからと回っているだけです。
1日や2日なら我慢はできますが、長期となると耐え難い環境になってしまいます。若い男性ならまだしも、高齢者や子供たちや女性ならなおさらです。
しかもエコノミークラス症候群は、高齢者がかかりやすいと思われがちですが、意外なことに40歳代の女性に多くみられるそうです。ですから年齢を問わず、避難所では簡易ベッドが必要なのです。
はっきりとした因果関係はまだわからないのですが、どうやら劣悪な生活環境がエコノミークラス症候群などの発症の理由がありそうです。
劣悪な避難所環境が、被災者の健康を悪化させる!
人口密度が高く圧迫感すら感じる
ストップザ雑魚寝!
沢山の研究の成果を受けて、新潟大学の榛沢医師や石巻赤十字病院の植田医師らと共に、次の災害に向けて避難所環境の改善に取り組むことになりました。
合言葉はストップザ雑魚寝!
とにかく、避難所が開設されたら簡易ベッドが設置されるのが当たり前にしたい。ベッドには雑魚寝とは違って、驚くべき力があるのです。
たとえば、福島県の原子力災害の被害に遭った多くの方々は、遠く群馬県や新潟県へ2次避難をしています。
そのうちの、群馬県片品村というスキー場の村に避難している方々を対象に、榛沢先生が検診をしたのですが、不思議な結果が出たのです。
民宿に避難している人とロッジに避難している人に血栓の発症率の差が3倍以上と、明らかに違いが認められたのです。
もちろん、両方とも食事や水、運動など生活条件は全く同じです。
違うのは、部屋のタイプだけ。片方は民宿の畳の部屋。片方はロッジのベッドの部屋。不思議なものです。
やはりここでも、ベッドの使用で血栓の発症率を抑えたのです。
海外の事例でもそうでしたが、血栓の予防の為にも避難所には絶対にベッドが必要だということのようです。
和風の民宿は畳敷きで雑魚寝
洋風のロッジはベッドで起き上がりやすい生活
また、新潟県の高級温泉旅館に2次避難されているグループの検診も実施しました。そこでも同じ結果が得られました。
生活環境としては贅沢すぎる高級旅館とはいえ、畳敷きだったので、被災地程ではありませんが、非常に高い発症率だったそうです。
いずれにしても、雑魚寝をすると体が次第に動かなくなり、血栓ができやすくなってしまうのが原因のようです。
高齢者には活動性を保ちやすいベッドの使用が必要ですね。
あらためて、
ストップザ雑魚寝!です。
続く
私達の会社、Jパックス㈱のホームページです。
https://jpacks.co.jp/wp/