避難所の医療体制
医療については、もちろん私は医師ではありませんので専門的見地ではなく、一般人としての感想を記したいと思います。
2日目に行ったモデナ県のミランドラ地区でも大変大きな被害がありました。
5月20日と29日に、マグネチュード6と5,8の地震が発生。街がほとんど崩壊して、死者16名、負傷者350人、そして人口25,000人の町の半分が避難しているそうです。
避難所にはやはりテントやプレハブで診療所が設置されていました。
プレハブでできた診療所
常時送風してテントを張っている
テント内に並んだ診療ベッド
子供達のPTSD予防の為の心理療法士を配置
診療分野ですが、救急はもちろん主要な診療分野だけではなく、整形外科、レントゲン科、産婦人科、小児科、歯科、薬局、子供たちのPTSD予防の為の心理療法など多くの分野が設置されていました。
さながら出前病院のようです。
テント内では、入院患者こそ近隣の病院に転送していますが、簡単な手術も行うだけの設備も備えていました。
日本の被災地では、医師団が継続的に医療活動をしていましたが、ほとんどが検診であり、急性期を除いて、本格的な治療は被災を免れた病院に送って実施していたように思います。
避難所内に医師が駐在して、常時避難者の健康管理をする体制は被災者にとっても大きな安心になるのではないでしょうか。
欧州の習慣
さて、私達はモデナ市のホテルから2日間に渡って被災地を往復しましたが、道中日本ではあまり見慣れないモノを頻繁に目撃しました。
そう、キャンピングカーです。
7月の初旬ですがイタリアでは早くもバカンスが始まっていたのです。
頻繁に目にしたキャンピングカー
そう、実はイタリア人は野外で活動するのが本来得意なのではないか?
テントで生活して、食事は移動販売車のように厨房を積んだトラックで調理して、病院だってテントさえあれば簡単!
お昼なんて、医者も患者もみんな大きな木の陰でパスタとチーズでランチ!悲壮感も微塵も見せず、楽しそうに避難生活を送っているようにも見えました。
また、災害関連死のようなストレスや慢性疾患で亡くなる人も10名ほど(分母ははっきりしませんが)で本当に少ないようです。
本当かどうかわかりませんが、うつ病なんてほとんど無いようです。
これって国民性なんでしょうかね?
医食住を大切にする国、イタリア。
そんな風にも思えてきました。
ソニア教授とランチミーティング
病院にあるボランティアセンター
看護師などの医療関係者にもインタビュー
迅速な対応をした政府
今回の地震で、イタリア政府は24時間以内にテントを被災地に届けて、数時間で完成させたそうです。確かめてはいませんが、当然食事やトイレの設置なども同時に行ったのでしょう。
それではなぜ、そんなに迅速に対応できたのでしょうか?
地震発生直後、政府や州は直ちに非常事態宣言を発動しました。
そして実際に活動を始めたのが、Dipartimento della Protezione Civile(言うなれば市民安全省)です。
非常事態宣言を出したモンティ首相
Nazionale Protezione Civile イタリア政府 市民安全省
Regione Emilia Romagna エミリアロマーニャ州 市民安全局
この組織は、平時から有事の法制に切り替わると同時に活動を始め、直ちに被災者支援や復興復旧に取り組みます。
では、なぜこのような迅速な活動ができるのでしょうか?
私は、有事法制に変えることで、被害を最小に留めることができるからだと考えています。いわゆる減災に取り組むと言う考えです。
陸続きの国では、有事といえば災害だけでなく戦争やテロなども含みます。ですからその対応にも敏感なのでしょう。何が何でも自国民は守り抜く。こういう考えが根底に根付いているように思えました。
有事の際も非常事態宣言を出さず平時と同じ法制で活動した、日本の状況とは大きく違います。
災害時は時間との闘いです。時間とともに被害が拡大していくわけですから、初動の迅速さと的確で効果的な支援活動が非常に重要です。議論しているより行動しろということですね。
この市民安全局の行動が非常に効率よく成果を上げているように思えますが、日本は学ぶべきことが多いと感じました。
もっとも、日本も本気でやろうと思えばイタリア以上にうまく出来るはずです。
私たちは、そろそろ国家と国民の関係性を、きちっと考え直す時期に来ているのではないかと思いました。
イタリア編の終わりに
この度のイタリア北部地震の被災地訪問は、東日本大震災やこれまでの大災害における、劣悪な避難所環境の改善や雑魚寝を止めて簡易ベッドの導入するという、これまでの活動目的にとって非常に多くの学びがありました。
私にとって今回初めてのイタリア旅行でしたが、事前の知識も少なく大変不安でした。
そこで早瀬先輩とそのお嬢様に通訳をお願いしたのですが、現地では意外な程英語が通じなかった上に、まだ学生の早瀬さんは、難しい医療用語が混じったイタリア語を一生懸命に訳してくれました。
その彼女の一所懸命さに、現地の方々も快く応えてくれたのかも知れません。
そしてイタリアでの活動を全面的に用意して頂きました日本スローフード副会長の石田先輩には大変お世話になりました。
もしスローフード協会のご紹介が無ければ、イタリアには入ったとしても現地で右往左往するばかりで、活動など全く出来なかっただろうと思います。
この貴重な経験をもとに、今後の活動にしっかり役立てていきたいと思います。
皆様、本当にありがとうございました。
通訳の早瀬さん、榛沢医師、私
続く