高齢者を寝たきりにする生活不活発病
今年の6月25日の産経新聞に次のような記事が載りました。
~~~東日本大震災で被災した、仙台市の65歳以上の高齢者の2割が震災後に新たに歩行困難になり、10カ月後にも多くが回復していないことが、仙台市医師会と国立長寿医療研究センターの大川弥生生活機能賦活研究部長の高齢者1万人を対象にした調査で25日、分かった。
被災により仕事や趣味など体を動かす機会が減り、心と体の機能が低下した「生活不活発病」が原因とみられる。
震災後に歩行困難になったのは、居住タイプ別にみると、自宅(9296人)の19%、仮設住宅(100人)の38%、みなし仮設(418人)の48%、親族宅(216人)の48%だった。震災10カ月時点で回復していない人は、自宅の17%、仮設の29%、みなし仮設の46%、親族宅の45%で多くが回復せず、特にみなし仮設と親族宅に住む人はほとんど回復していなかった。~~~
被災した高齢者にとって、大変深刻な問題である生活不活発病。
地震や津波により自宅を失い、劣悪な避難環境の中で高齢者は、だんだん生きる意欲を失っていき、避難所や仮設住宅では昼も夜も寝たままで、何もしなくなっていきます。
そうすると、だんだん体が鈍り動かなくなって、ついには寝たきりになってしまうのです。上記記事にあるように、東日本大震災では65歳以上の2割が生活不活発病になってしまいました。
避難所では昼間も寝ていることが多い高齢者
そこで高齢者福祉の分野でたくさんの研究者や従事者が、その予防を呼びかけて、できるだけ自活している高齢者を寝たきりにしない取り組みが行われてきました。
避難所で、体操の先生が来てみんなで体操している映像も見たことがあると思います。
福祉関係者の懸命な努力は今も続いている
厚生労働省も被災地に向けて、生活不活発病対策の実施を、さまざまな方法で奨めました。
以下は、厚生労働省老健局老人保健課から被災県の担当部署に送られた事務連絡の抜粋です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016tyb-img/2r98520000016w0j.pdf
生活不活発病の予防のポイント
○ 毎日の生活の中で活発に動くようにしましょう。
(横になっているより、なるべく座りましょう)
○ 動きやすいよう、身の回りを片付けておきましょう。
○ 歩きにくくなっても、杖などで工夫をしましょう。
(すぐに車いすを使うのではなく)
○ 避難所でも楽しみや役割をもちましょう。
(遠慮せずに、気分転換を兼ねて散歩や運動も)
○ 「安静第一」「無理は禁物」と思いこまないで。
(病気の時は、どの程度動いてよいか相談を)
※ 以上のことに、周囲の方も一緒に工夫を
(ボランティアの方等も必要以上の手助けはしないようにしましょう)
※特に、高齢の方や持病のある方は十分気をつけて下さい。
ふむふむなるほど。そうですよね。そりゃそうです。
しかし、なんか変ですよね。
そりゃだれだって、できるなら自活したいですけど、できりゃ世話はない訳です。
本当は、高齢者は動きたくても動けないから動かないのであって、動きたくなくて動かないから動けなくなる訳ではない。
ということなんだろうと私は思います。
では、そもそもなぜ動けなくなるのでしょうか?
様々な要因はあると思いますが、そのうちの大きな部分を占めるのが、私は雑魚寝による長期避難生活にあると思います。
言い換えれば、雑魚寝の避難生活をさせておいて、できるだけ動きましょうと言っても、それはそもそも無理があるって言うことです。
本来ならば、動きにくくなる雑魚寝ではなく、まずは簡易ベッドを使用して、段差のある立ち上がりやすい環境にすれば、足を投げ出して立ち上がれます。
立ち上がることさえ出来たら、活動性は十分保たれるのです。
ですから災害発生時、避難所が開設されたら、高齢者が生活不活発病になる前に、是が非でも簡易ベッドの導入が必要なのです。
また、高齢者は体が動かなくなると、自分一人でトイレに行けませんので、水分を控えてしまいます。そうすると、血栓が余計にできやすく、エコノミークラス症候群のリスクも高まってきます。
やっぱりストップザ雑魚寝!ですね。
ベッドの段差で起き上がりやすくなる
高齢者にやさしい段ボール製簡易ベッド
避難所には簡易ベッドが望ましいということは理解していただけたと思いますが
段ボール製簡易ベッドには他にこんな利点もあります。
①布団が敷ける簡易ベッド
②片方荷重になっても転倒しない
キャンプだったら、快適で楽しいだろうな~!
段ボール製簡易ベッドは、ちゃんと暖かい布団が敷けるので、寝返りも打てて、長期の避難生活でも少しは快適です。
またお年寄りは、ベッドの端に手をかけて体重を支えながら立ち上がるのですが、片方荷重になっても、段ボール製簡易ベッドは安定していて転倒しにくいのです。
ベッドの高さも、病院のベッドだったら足がぶらぶらしますが、段ボール製簡易ベッドは立ち上がりやすさを考慮して、35cmにしています。
災害などの緊急時は、段ボール製簡易ベッドが一番適していると思います。
少しでもお役に立てれば!
災害に遭って長年築き上げてきた何もかもを失い、失意の日々を過ごさなければならない被災者の皆さん。
若い人ならまだしも高齢の方は、生きる目的も持てなくなるのでは無いかと心配です。
そんな中、十分な生活環境を提供するのは無理としても、少しでも楽に生活をしてもらいたい。それが、重大な病気をも予防してくれるとなれば、こんな嬉しいことはないし、何とか段ボール製簡易ベッドを普及させたい。
そういう思いで活動を続きてきました。
後日談ですが、”第19回 600人分の段ボールベッド”で紹介した、福島市あづま避難所の保健師さんにこんなことを聞きました。
”震災後の3か月で、寝たきりになった高齢者が30名出てしまったが、6月3日に段ボール製簡易ベッド600床を導入した後は、1人も寝たきりは出なかった”
導入前と後では、単純比較はできないのですが、寝たきりゼロと聞いて想いが報われたような気がして大変うれしく思いました。
と同時に、避難所開設当初から段ボール製簡易ベッドが導入できたら、30名も寝たきりを出さなくて済んだかもしれないので、悔やまれます。
災害そのものの被害は食い止めることはできません。しかし、避難所での2次被害は減らす手段があるのです。
それが、段ボール製簡易ベッド、暖段はこベッドです。
次の災害までに、仕組みを全国に拡げるために今後も、普及活動を続けていきたいと思います。
続く
私達の会社、Jパックス㈱のホームページです。
https://jpacks.co.jp/wp/